スポーツのチカラvol.7 いいぞ!

「いいぞ!」
シュートを決めた子どもが、車いすの大先輩から褒められ、頭を撫でられた
ときの満面の笑み。照れながらも嬉しそうな表情、忘れられない瞬間でした。

私が初めて総合型地域スポーツクラブに参加したのは10年ほど前。当時住んでいた福岡県久留米市の「桜花台クラブ」での活動でした。2007年の設立以来、子どもから高齢者まで、障がいの有無に関わらず、誰もが気軽にスポーツを楽しむ環境づくりに取り組んでいます。指導者には、障がいを持った方もいます。

このクラブでの活動を通じて、障がいがあってもなくても、今までできなかったことができるようになったときに見せる子どもたちの笑顔の素晴らしさに気づきました。ひとつできるようになった瞬間、次へのチャレンジに向かって頑張る姿を見ることができました。また、障がいを持った子どもと、障がいを持って人生を歩んできた先輩の大人との出会いの大切さも知りました。自らも障がいがあるからこそできるサポートや心のケアもあるのです。障がいを受け入れ、自らが考え、力強く自立していく術を伝える機会となります。このとき、スポーツの持つ多様なチカラを実感します。

昨年開催された東京オリンピック・パラリンピック。東京での開催が決定した2017年以降、パラスポーツが注目されメディアでの取り上げも多くなり、パラスポーツを取巻く環境は、急激に変わり始めました。

東京パラリンピックが終了してから1年。関係者に話を聞くと、障がい者スポーツの認知度は高まりましたが、障がいに対する理解はそれほど深まっていないと感じます。障がいを持った大人や子どもが、身近でスポーツを楽しめる環境は、さほど変わっていないのが実態です。「桜花台クラブ」のような、年齢や障がいの有無に関わらず、スポーツを楽しめる環境を提供する総合型地域スポーツクラブが全国で増えることを望みます。

文・撮影:佐山 篤
全国スポーツ推進委員連合機関誌「みんなのスポーツ」2022年12月号