スポーツのチカラ Vol.6 ターニングポイント

9月に開催された車いすバスケットボール男子U23世界選手権で、日本は優勝しました。世界大会での金メダル獲得は、日本車いすバスケ界では史上初の快挙。東京パラリンピックでの活躍が記憶に新しい鳥海連志選手は、今回のU23世界選手権でもオールスター5に選出されました。

2016年リオパラリンピックで、チェアワークとスピードを持ち味としていた高校3年生の鳥海選手は、初めてのパラリンピック出場を果たしました。しかし、ほとんど出番がなく、日本は9位に終わりました。世界の壁を実感し、悔しい思いをしました。その後、高校卒業、大学入学、チーム移籍、大学中退、コロナ禍、結婚などの出来事がありました。リオから東京までの5年間、鳥海選手は自分が大きく変わったと言っています。(詳しくは、鳥海選手の著書「異なれ」をお読みください)

東京パラリンピックに向けては、「オールラウンダー」となってスタメンを勝ち取るという決意を持って臨んだそうです。新たな取組みとして、ゴール下でも優位にプレーできるように、車いすの座面を20cmも高くしたそうです。シュートやリバウンドでは、高さは有利に働きますが、両足がない鳥海選手にとっては、体の重心が高くなるため、バランスをとることが難しくなります。チェアワークとスピードの低下を余儀なくされます。それでも、東京パラリンピックでスタメンを獲るために、持ち味のチェアワークとスピードを落とさずに、座面を高くするという大きなチャレンジを選択したのです。

鳥海選手のこの決意とチャレンジが、東京2020パラリンピックでの銀メダル獲得、大会MVP受賞をもたらしました。

文・撮影:佐山 篤
全国スポーツ推進委員連合機関誌「みんなのスポーツ」2022年11月号