パラ馬術の宮路満英選手、東京2020パラリンピックでの競技の様子

スポーツのチカラ vol.4 きずな

 パラ馬術。人と動物が一緒に参加する唯一の競技。また、パラリンピックでは唯一の採点競技です。人馬一体の演技の正確性と芸術性が採点の基準です。

 昨年開催された東京2020パラリンピック。規定演技種目で7位入賞を果たした宮路満英選手。かつては、JRAの調教助手でした。47歳の時、脳卒中で倒れ、右半身麻痺と高次脳機能障がいが残りました。宮路選手のように脳の障がいのため、規定演技の順番や経路を覚えることが難しい選手には、馬場の外から「コマンダー」が声で伝え、サポートすることができます。宮路選手のコマンダーを務めるのは、奥様の裕美子さん。裕美子さんは、普段の生活はもとより、練習、試合などでも宮路選手を支えています。

 宮路選手が、脳卒中で倒れたのは2005年のこと。倒れてから1ヶ月間意識がなく、目覚めた時、目の前にいた裕美子さんを見て、発した一声は「あんた誰や」。

演技が終わると、宮路選手は、馬と裕美子さん、それぞれに優しい声色で「おおきに」と感謝の気持ちを伝えます。試合後の記者のインタビュー。宮路選手の傍には裕美子さんがいます。障がいのためなかなか言葉が出ない宮路選手の言いたいことを汲み取り、代弁します。裕美子さんが話し終えると、宮路選手は柔らかな笑みを浮かべ、「そうそう、そういうこと」と続けます。

 暑い夏の馬場に、ふわっと穏やかな風が吹いたかと思うと、目に見えない糸がゆらりとなびき、互いの心と心をつないでいるかのように見えました。

文・撮影 / 佐山 篤

全国スポーツ推進委員連合機関誌「みんなのスポーツ」2022年8•9月号掲載